「彼女たちは歌う」 Listen to Her Song

東京芸大 I LOVE YOU プロジェクト展覧会

東京藝術大学 美術館陳列館
2020年8月18日 - 9月6日
(本展は会期終了いたしました)

「彼女たちは歌う」展示風景記録
2020年 818-96
会場=東京藝術大学 美術館 陳列館
解説=荒木夏実
写真=堀蓮太郎(作家提供写真を除く)

「設営風景記録」はこちら

スプツニ子!
《生理マシーン、タカシの場合。》2010 Sputniko!
“Menstruation Machine, Takashiʼs Take”

トランスベスタイト(異性装者)のタカシは女性の身体に近づきたくて、生理マシーンを装着し、痛みも含めた生理を体験する。「痛いでしょ、辛いでしょ、でも私を知りたいでしょ?」とスプツニ子!は挑発するように歌う。

副島しのぶ
《人形が悲しみを演じるとき》2020 Shinobu Soejima
“Breath Blink Sometimes Cry”

こちらを見つめ、呼吸し、涙を流す人形。私たちはこれをなんと呼ぶのだろう?人間と人形、生物と非生物の境界はどこにあるのだろう。

百瀬文
《Social Dance》2019 Aya Momose
“Social Dance”

耳の聞こえないろう者の女性と聴者の男性が手話で会話をしている。「手を握る」という優しさを表す行為は、ろう者の「声」を封じることになる。すれ違う恋人同士の姿を通してコミュニケーションの問題が浮かびあがる。

乾真裕子
《月へは帰らない》2020 Mayuko Inui
“I’m not going back to the Moon”

かぐや姫はなぜ月へ帰らなくてはならなかったのか。抑圧的な家庭に育った母親のインタビューを通して、女性の置かれた環境に関する問題が浮かび上がる。「月へは帰らない。私のままで私は生きていく。」乾は彼女自身の決意を歌っている。
「月へは帰らない」作・歌:乾真裕子

遠藤麻衣 × 百瀬文
《Love Condition》2020 Mai Endo x Aya Momose
“Love Condition”

粘土をこねながら「理想の性器」について語り合う2人。着脱可能、触手、皮状のものが包み合う、玉を転がす…性別や生物すら超えた、新たな関係性が「おしゃべり」を通して見えてくる。

山城知佳子
《チンビン・ウェスタン『家族の表象』》2019 Chikako Yamashiro
“Chinbin Western: Representation of the Family”

米軍基地移設のために辺野古の海を埋め立てる仕事をする男性と家族。先祖の土地を守る老人と孫娘。「マカロニ・ウェスタン」ならぬ「チンビン(沖縄の菓子)・ウェスタン」は、沖縄の現実を描く悲喜劇だ。オペラと沖縄の琉歌が作品に複層性を与えている。

鴻池朋子
《インタートラベラー》 2020 Tomoko Konoike
“Inter-Traveller”

狼の毛皮からのぞく少女の足。絵具で汚れている。鴻池の「インタートラベラー」はこれまでさまざまな場所に出現してきた。狼と一体化した少女は窓辺から何を見るのだろうか。

小林エリカ
《彼女たちの戦争》2020 『ちくま』 2020.1.No.586-8.No.593
デザイン:名久井直子
Erika Kobayashi
“Her War”
Chikuma 2020.2.No.586-8. No.593
Designed by Naoko Nakui

放射能の名付け親マリ・キュリーやパリで活躍した俳優の貞奴、女性参政権を訴え、競馬馬に飛び込んで自殺したエミリー・デイビソン、核分裂の発見をしたリーゼ・マイトナー。時空を超えて、女たちの視点から捉えた戦いに注目する。

ユゥキユキ
《「あなたのために、」》2020 YuKI YUKI
“For your own good”

娘たちが家から離れた後、人形を「三女のサン子ちゃん」と呼んでいた母親。過保護な母の呪縛から逃れるために作家は母とともに巨大なサン子ちゃんの編みぐるみを作った。その胎内にあるのは、BLのコスプレをした相手に「BLとして」恋愛感情を抱いた作家の映像。裏のモニターには「インナーマザー」との決別を試みる作家の姿が映る。

金仁淑
《Stacking hours 2001-2018》2020 Insook Kim
“Stacking hours 2001-2018”

金自身のルーツである在日コリアンの家族と学校のシリーズや在独コリアンを取材した作品を組み合わせ、コミュニティの中に存在する個や記憶を表現したインスタレーション。その中にHeesaという少女の成長物語を見いだすことができる。

遠藤麻衣
《私は蛇に似る:「肥前国風土記」より》2020,
《私は蛇に似る》2020 Mai Endo
“Becoming a Snake: From Hizen no Kuni Fudoki (description of the culture and geography of Hizen province) “,
“Becoming a Snake”

「肥前国風土記」に記された蛇と人間の女性との交わりの場面を、作家が影響を受けた90年代の漫画調に仕上げた。古典の物語は作家の中で漫画に翻訳され、解釈されている。写真作品では、遠藤自身が蛇へと変身。その手には飼っているウズラが握られている。

菅実花
《A Bath》2020 Mika Kan
“A Bath”

曇ったガラス越しにバスタブと球体関節人形が見える。そこに存在する盗撮的な視点。作家自身を含む多くの女性が経験してきた「のぞき」の被害と美術史的視点が結びつく。女性の身体か人形か。危うい境界を可視化する。